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コラム

交通事故と「むちうち」 ~ 被害者が直面する課題と求められるサポートとは【弁護士解説】

2023.10.19

交通事故がきっかけで「むちうち」に悩む方は少なくありません。
しかし、その症状は画像診断で明確にはわからないことも多く、保険会社との交渉で被害者が苦戦するケースもあるようです。
本記事では、むちうち被害の実情や保険会社との交渉のポイントなどについて、坪田弁護士にインタビュー。
事故の被害者が知っておくべき情報を徹底解説します。
 

事例

半年前、車で信号待ちをしている際に追突事故に遭遇しました。
事故直後は痛みがなかったものの、数日後に首の痛みが現れ、医師からは、いわゆる「むちうち」という診断を受けました。
その後、しびれや自律神経の症状も現れ、会社を休まざるを得なくなるなど日常生活にも支障が出ています。
しかし、相手の保険会社からは症状固定、治療を打ち切りたいと言われて、困っています。
私としてはこのまま治療を継続したいですし、賠償金の面でも納得の行く対応を求めたいです。
 

むちうち特有の課題とは

ーむちうちは交通事故の中でも割とありがちなトラブルかなと思うんですが、やはり多いですか?
 
そうですね。
交通事故のご相談のうち、半数ぐらいはむちうちのご相談だと思います。
 
ー依頼者の方たちはどんなことに困ってらっしゃるんですか。
 
保険会社とのやり取りで困っている方が多いですね。
保険会社の担当者の対応が厳しいであるとか。
また、「仕事で日中は忙しいのに、保険会社は夕方5時以降は連絡ができなくて話が進まない」という相談もあります。
 
ーお勤めの方だと、連絡できるのが平日日中のみというのは困りますよね。また、むちうち特有の問題として、骨折のようなケガとは違って症状が「目に見えない」というのがあると思います。だからこそ、保険会社の担当者の対応が厳しくなるという側面もあるんでしょうか。
 
そういった側面はありますね。
むちうちはMRIやレントゲンの画像に出ないことが多いので。
そうなると2、3ヶ月で「治療は終わりですよね」と保険会社に言われてしまうこともあるようです。
本人のしんどさというのが他の人に伝わりにくいので、軽く見られがちという傾向はあるかもしれません。
後遺障害(後遺症)についても、「画像的に何も出てこない」という理由で認定されないというケースは珍しくありません。
本人の気持ちと保険会社の認定が大きくズレやすいんですよね。
やりきれない気持ちを抱えた被害者の方が、「保険会社の対応に納得できない」「なんとか少しでも治療を続けたい」ということで弊所に来られるケースも結構あります。
 

後悔しないために~交通事故でむちうちになった場合にやるべきこと

ー交通事故に遭った直後、症状がすぐにでる場合とそうじゃない場合、どちらのケースもあると思います。もし事故の被害にあった場合、被害者としてはどんな行動をすればいいんでしょうか。
 
症状があればすぐに病院に行くことが大事です。
まず、お医者さんに診てもらって診断書をもらう。
そして、人身事故にするために警察にその診断書を持って行く。
あとは相手の保険会社に「対応してほしい」ということですぐに連絡する。
この3点が大事ですね。
 
ー「仕事で急いでいるから」とか「痛みがないから」と何もしないでいるうちに症状が出たということになってしまうとどうなってしまうのでしょうか。
 
数日であればまだいいのですが、 1、2週間放置してしまってから症状が出たというふうになると、事故と症状の因果関係をシビアに見られる可能性もあります。
 
ー時間が経ってから来られた方というのは先生のところの依頼者の方にもいますか。
 
少し時間が経ってから病院に行ったという方はいますね。
それでも保険会社が対応してくれれば普通に治療はできるんですけれども、保険会社が対応しないケースだと難しい状況になる可能性があります。
事故とケガとの因果関係が疑われる場合、保険会社は病院に照会をして、さらに自賠責にも「治療していいか」ということを事前認定という形で問い合わせをします。
対応してもらえたとしても時間がかかる可能性がありますね。
さらに自賠責が「ちょっとこれは対応できません」という話になると保険会社も対応してくれないので、全然補償が受けられないという事態になってしまうこともあります。
本当に異常がなければ物損でいいんですけれども、何か気になることがあれば痛みがなくてもすぐに病院に行くべきでしょう。
 

保険会社との交渉で気をつけるべきポイントは?

ー事故の相手方や保険会社との交渉において、被害者として注意すべき点や注意深く検討すべき事項にはどんなものがあるでしょうか。
 
そうですね。
治療の場合はまだ一生懸命通院している状態だと思いますので、慰謝料の観点から週の半分を目安に真面目に病院に通うというのが鉄則ですね。
ただ毎日のように行くと、行き過ぎと言われてしまう可能性もあります。
 
ーそうなんですか。行けば行くほどいいのでは、と思ってました。
 
実はそんなことはないんですよ。
慰謝料の金額も変わりません。
月半分ほど行けば充分ですよ。
 
ーなるほど。治療時に関する交渉で揉めやすいポイントはどこでしょうか。
 
揉めやすいのは治療期間ですね。
また、転院ができるかどうかが問題になることもあります。
 
ー慰謝料などのお金の面はどうでしょうか。
 
治療費や交通費は実費で支払ってもらえます。
慰謝料については揉めるケースはありますね。
通常、保険会社の側は一番低い金額を提示してきますので。
自賠責基準というものが一番低い基準なんですけどね。
だから、それについては交渉して、金額を上げていくというのが交渉における一番のポイントになりますね。
弁護士が出てくる場合、裁判基準が慰謝料算定の基準になります。
裁判基準は過去の裁判例から作られた算定基準で、保険会社が提示してくる金額よりも高めに慰謝料が算定されるんです。
弁護士であれば、この基準をもとに算出した金額を提示していくことになります。
 
ー弁護士の先生に依頼することで慰謝料が増える可能性があるんですね。最終的にどのあたりの金額で話し合いがまとまることが多いんでしょうか。
 
裁判基準の9割ぐらいでまとまるケースが大半でしょうか。
担当者によっては100%という金額を提示してくれる時もありますね。
だいたいは裁判前の和解になるので、金額を少し抑えて9割程度でまとまることが多いです。
 
ーちなみに裁判になったら満額いただけるのでしょうか。
 
裁判で判決までいけば認められますよね。
ただその分時間もかかります。
裁判をすると実際にお金が手元に入るのに一年かかったりしますから。
さらに、書面の作成、ヒアリング、打ち合わせと依頼者の方の負担も増えます。
それらの負担を踏まえてどうするかを決める必要がありますね。
実際には、特に大きな争点がない場合ある程度の金額で示談することが多いです。
 
ーちなみに裁判前の和解でうまく話がまとまった場合、示談交渉が始まってから何か月ぐらいで解決できる事が多いのでしょうか。
 
後遺障害(後遺症)がないケースでしたら、病院の書類がそろって慰謝料の計算ができるようになった状態から1、2ヶ月という感じでしょうか。
 
ー逆に後遺障害(後遺症)が残った場合はどうなのでしょうか。
 
その場合、後遺症に関する慰謝料や逸失利益という項目が増えるので、保険会社の検討時間が長くなります。
後遺症の等級がついて後、回答が来るまで3か月以上かかることもありますね。
 

裁判をした方がいいケースもある

ー後遺障害の重さをめぐって、被害者の言い分と保険会社の言い分が食い違っている場合はどうでしょうか。
 
その場合、根本的な部分で意見が違ってきます。
通常自賠責で後遺症(後遺障害)が認められている場合、保険会社はそれを前提にしてくれます。
でも実際にその点を争うような場合になってくると裁判しか解決方法がないと思います。
むちうちの症状がある場合、後遺障害認定がとれるかどうかは大きな問題です。
示談金の金額も大きく変わりますから。
弁護士としても、資料集めや意見書の提出などできることはすべてやります。
認定がされなかったら異議申し立てをすることもあります。
 
ー他に裁判をする方が良いケースにはどんなものがありますか。
 
過失割合などの主張で全くお互い逆の主張をしている場合は話が進みません。
このようなケースについては裁判しか解決方法がないと思います。
 
ー過去に先生が扱われた事件の中で、むちうちに裁判になったケースはありますか。
 
ありますよ。
保険会社が事故のケガとの因果関係を強く問題にしたことがあったんです。
単純な追突事故で何も変な行動や流れはなかったので、裁判で争ってこちらの主張を認めてもらうことができました。
保険会社がケガと事故の因果関係を問題にしているようなケースでは、裁判をした方がよいことがありますね。
 
ー場合によっては、裁判で正当な金額を請求するべきということですね。ちなみに症状が長期化した場合、治療費は実費で、さらにその後の慰謝料ももらえると先生がおっしゃっていましたが、示談の際にもらえる賠償金はどのように計算されるのでしょうか。 また休職や失業といった事態になった場合、その分の金額も請求できるのでしょうか。
 
休業に関しては、休業損害証明書というものを会社で発行してもらい、その中で休んだ期間や一日の平均賃金などが書かれているものをもとに休業損害を請求することができます。
有給休暇を使った場合でも、「そのために有給休暇を使った」という理由でそれも損害にできます。
一方、失業になってくると休業損害証明書にあたる書類がないので、ちょっと厳しいですね。
その場合は後遺障害認定を受けて逸失利益を請求することになるかなと思います。
ですから症状固定までの時期はあまり長くない方がいいですね。
逸失利益は症状固定後から計算されますから。
 

弁護士からのメッセージ

むちうちの症状は本当につらいものです。
自分だけしか症状がわからないことから、治療期間や後遺障害の認定をめぐって「納得がいかない」と感じる場面も多いのではないでしょうか。
専門家としてベストを尽くし、被害者の気持ちに寄り添うのが我々弁護士の仕事です。
適切な賠償を受けられるように、早めに弁護士にご相談いただければと思います。

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