コラム
飲酒運転による交通事故の法的責任と補償請求方法を弁護士が解説!
2024.03.15 交通事故の基礎知識飲酒運転は極めて危険で悪質性が高く、事故の有無に関わらず処罰対象ですが、人身事故を起こした場合は重い刑罰を受けます。
損害賠償額が増額されることもありますが、被害者の方が適正額を受け取るためには、相手保険会社と示談するケースが多いです。
そこで今回は、高の原法律事務所の坪田弁護士に、飲酒運転の加害者が負う法的責任と相手保険会社への補償請求のポイントについて聞きました。
飲酒運転で交通事故を起こすと重い刑罰がある
ーー 飲酒運転で実際に人身事故を起こした加害者は、法的にどういった責任を負うのでしょうか?
「飲酒運転」という罪名は存在しませんが、飲酒をした状態で運転すること自体が違法であり下記のような罪に問われます。
- 酒気帯び運転の罪
- 酒酔い運転の罪
罪名 | 罪の内容 | 罰 |
---|---|---|
酒気帯び運転 (道路交通法第65条第1項) |
基準値(呼気中アルコール濃度0.15mg/Lまたは血中アルコール濃度0.03%)を運転中に超えていた場合 | 3年以上の懲役刑または50万円以下の罰金 |
酒酔い運転 (道路交通法第65条第1項) |
アルコール値に関わらず、アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがあった場合 | 5年以下の懲役刑または100万円以下の罰金 |
飲酒運転が原因で人に怪我を負わせたり死亡させてしまったりした場合、次のようなさらに重い罪に問われます。
- 過失運転致死傷罪
- 危険運転致死傷罪
罪名 | 罪の内容 | 罰 |
---|---|---|
過失運転致傷罪 (自動車運転処罰法第5条) |
運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合 | 7年以下の懲役、禁錮または100万円以下の罰金 |
危険運転致傷罪 (自動車運転処罰法第2条・3条) |
アルコール等の影響で正常な運転が困難な状態を認識しつつ運転し、人を負傷または死亡させた場合 | 負傷:15年以下の懲役 死亡:1年以上20年以下の懲役 |
また飲酒運転で人身事故を起こした状況でアルコールの発覚を免れるために、現場から逃走したり飲み重ねをしたりすると、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪となり、12年以下の懲役刑が科せられます。
飲酒運転の加害者に損害賠償金を請求するために
対象となる損害賠償金
ーー事故の相手が飲酒をしていた場合、どういった名目で損害賠償請求ができますか?
交通事故による損害賠償には下記のような請求内容があります。
事故によって実際に発生した損害 | 治療費、通院交通費、付添看護費など |
事故にあわなければ本来得られたはずの利益の賠償 | 休業損害、逸失利益 |
慰謝料(精神的苦痛に対する賠償) | 入通院慰謝料、後遺傷害慰謝料、死亡慰謝料 |
事故による物の損害 | 車の修理費用、代車費用、破れた衣類など |
飲酒運転の場合は通常の事故と比べて慰謝料が増額されることも多いです。
飲酒運転は悪質性が極めて高いため、その分受けた精神的苦痛が大きくなると考えられるからです。
損害賠償金の計算方法
ーー損害賠償の計算方法を教えてください。
慰謝料などの損害賠償を計算するにあたっては次の3つの基準が使われます。
- 自賠責基準:自賠責保険で定められている基準。賠償金額は最も低くなる。
- 任意保険基準:保険会社が独自に定めている基準。自賠責基準よりやや高いか同額程度になるケースが多い。
- 弁護士(裁判)基準:過去の裁判例をもとに算出した基準で、裁判所はもちろん弁護士が請求する際も用いる。賠償金額は最も高額かつ被害者が受け取るべき正当額になる。
また損害賠償の計算で重要な「過失割合」について、相手が飲酒していた場合は被害者側の過失割合は減る可能性が高く、相手の過失が加算されます。
損害賠償金を請求する流れ
ーーどのように損害賠償請求をしていけばよいでしょうか?
交通事故のほとんどのケースは、加害者と被害者が話あう「示談交渉」で解決を図ります一般的には加害者が加入している保険会社と交渉をしていくことになります。
示談交渉から賠償金が支払われるまでの流れは下記です。
示談交渉
受けた損害をどのように賠償していくか、過失割合などを参考に具体的な示談条件を話し合います。
話し合いで解決が難しい場合は、裁判などになる可能性があります。
保険金請求書等の提出
示談成立後、保険会社から示談書が送付されます。
署名して返送をしましょう。
あわせて下記のような書類の提出が必要になることもあります。
- 請求者の印鑑証明書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 診断書
- 診療明細書
- 通院交通費明細書 等
保険金の支払
示談書の返送後、1〜2週間ほどで指定した口座に損害賠償金が振り込まれます。
よりよい条件での和解を目指していく場合、弁護士に依頼することでその可能性を高められます。
飲酒運転の交通事故は弁護士に依頼するメリットが大きい
飲酒運転の加害者から適正額の損害賠償額を受け取れるかどうかのポイントは、
- 被害者側で適切な過失割合をだせるか
- 相手の保険会社に適切に交渉できるか
- 飲酒運転という悪質性の高いことを理由に、慰謝料の増額を勝ち取れるか
でしょう。
しかし示談交渉をする相手の保険会社もプロなのでかんたんには応じてくれないでしょう。
交通事故に強い弁護士に依頼することで、上記のようなポイントをおさえ、相手保険会社にしっかりと主張を通して増額解決が図れますよ。