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コラム

交通事故による精神的トラウマとその克服方法

2024.05.27

交通事故は身体症状以外にも精神的なダメージを受けたことがトラウマになることもあり、日常生活に支障を及ぼしたり、恐怖から車の運転ができなくなったりします。
交通事故で精神的トラウマを抱えてしまうと、それを克服するための治療に取り組む人も多いです。
そこで今回は、高の原法律事務所の坪田弁護士に、交通事故による精神的トラウマとその克服方法について解説してもらいました。
精神的トラウマになった場合は、損害賠償請求できるのかについても教えてもらいました。
 

交通事故による精神的トラウマ

ーー 交通事故にあうと、被害者はどのようなトラウマを抱えるのでしょうか?
 
交通事故など命の危険を感じるような恐怖体験は、後々さまざまな精神症状につながります。
身体症状と違って、精神的な傷は将来の長期にわたって症状が続く点が難しいとされています。
代表的な精神的トラウマとしては下記のようなものです。
(PTSDは精神的トラウマと区別して考えることもありますが、今回は精神的な症状ということで紹介例に含めています)
 

  • ・PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • ・うつ病
  • ・不安障害
  • ・恐怖症

 
少し古いデータになりますが、交通事故被害実態調査研究報告書(1999)では、事故後1か月以内で被害者の49%が「突然に事故のときの光景がよみがえる」、35%が「事故のことについて考え込んでしまう」と回答しています。
 

交通事故の精神的トラウマの克服方法

ーー 交通事故のトラウマは非常に辛い思いをするのですね。どのようにトラウマを克服していくのですか?
 
トラウマといっても人によって症状はさまざまなので、本人の状態と照らし合わせて治療に取り組んでいくことになります。
基本的には、精神科にかかって医師のもとで治療を行います。
よくとられる方法としては下記です。
 

  • ・薬物療法
  • ・認知行動療法
  • ・グループ療法

 
それぞれについてかんたんに解説しますね。
 

薬物療法

医師から恐怖や不安を緩和するための薬を処方してもらいます。
薬でトラウマそのものが改善するというのではなく、あくまで気持ちを整えて少しでも日常生活が楽なることを目指します。
気持ちに余裕がでれば、他の治療法にも取り組みやすくなりますよね。
 

認知行動療法

認知行動療法は、被害者の考え方や行動のパターンを変え、感情や行動を改善する心理療法のひとつです。
トラウマに対して行われる認知行動療法の代表例は、持続エクスポージャー療法、認知処理療法、眼球運動脱感作療法などです。
 

持続エクスポージャー療法

安全な環境で、被害者がトラウマとなった事故の状況記憶と向き合うことで、慣れを促して症状の改善を図る。
 

認知処理療法

心の動きの観察を通して、トラウマについて考えを整理したり、認知を見直したりする。
 

眼球運動脱感作療法

交通事故を思い出しながら、医師の指を目で左右に追っていくことを繰り返し、トラウマを乗り越えていく治療法。
 

グループ療法

グループ療法は同じ経験をもつ患者同士で話し合ったり、支えあったりすることで症状の緩和を目指すものです。
 

精神的トラウマは損害賠償請求ができる可能性あり

ーー精神的な症状では損害賠償請求できないのでしょうか?
 
精神的な症状も損害賠償請求が可能です。
交通事故と精神的トラウマの因果関係さえ証明できれば認められることもあります。
代表的なのはPTSDやうつ病です。
これらは要件を満たすことで後遺障害認定を受けられ、後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし前述したとおり、事故との因果関係を証明する必要があり、実はかんたんなことではありません。
事故の大きさや被害者の衝撃の程度が、事故との因果関係の重要な判断要素となります。
一般的には、被害者が死の恐怖にさらされるほどの大きな事故に遭遇した場合は、被害者の精神的トラウマと事故との因果関係が認められやすくなります。
 
ーー精神的な症状で後遺障害認定を受けるにはどのような手続きが必要ですか?
 
後遺障害認定を受けるためには、医師から症状固定後に後遺障害認定診断を作成してもらいます。
その他必要な書類を整えて申請手続きを行います。
申請先は、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所という機関です。
基本的には保険会社が間に入って申請をしてくれます。
加害者の任意保険会社を介す場合は「事前認定」と呼ばれ、必要書類は保険会社が作成してくれます。
事前認定は、提出書類は保険会社に任せになりますが、被害者負担は少ないのが特徴です。
加害者の自賠責保険に請求する場合は、「被害者請求」と呼ばれ、必要書類を自分で準備する必要があります。
一方で事前認定よりも被害者請求の方が、自由かつ有利に書類の準備ができるので等級認定されやすいとされています。
 

弁護士に依頼するメリット

ーー弁護士に相談することもできるのでしょうか?
 
もちろんです。
交通事故の精神的トラウマの症状は本当に辛く、経験した人にしかわからない苦しみがあります。
とはいえ、精神的トラウマによる損害賠償請求はなかなかハードルが高いのも事実です。
弁護士に相談することで、医師に後遺障害診断書を書いてもらうときに、認定を受けるためのポイントを伝えてもらえます。
他にも弁護士と医師とが密に連携することで、検査を受けるなどして後遺障害認定の申請に必要な書類をスムーズに集められます。
被害者請求をしていく際も強い味方になってくれるでしょう。

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