コラム
交通事故での損害賠償請求と保険会社の対応:適切な支援を受けるために
2024.06.04 損害賠償交通事故の損害賠償は加害者の自賠責保険だけでなく任意保険会社からも支払われます。
事故にあってしまうと、心身のダメージを抱えた状態で治療をしながら保険会社への対応をしていかなければなりません。
そこで今回は、高の原法律事務所の坪田弁護士に、交通事故での損害賠償請求について保険会社への対応や、適切な支援を受けるための方法について解説してもらいました。
保険会社に請求できる損害賠償
ーー 交通事故にあうと保険会社に対して何を損害賠償として請求できるのですか?
事故と因果関係のある経済的な損害と、精神的な損害について請求できます。
経済的な損害は、さまざまで次のような名目があります。
- ・ケガの治療費
- ・通院の交通費
- ・休業損害
- ・自動車の修理費
- ・逸失利益
精神的な損害は「慰謝料」です。
ーー 損害賠償請求まではどのような流れですか。
交通事故にあったら大まかに次のような流れで損害賠償請求をしていくのが一般的です。
- 1. 事故にあったことを保険会社へ連絡する
- 2. 保険会社から治療費の支払いを受けて通院して治療する
- 3. 治療終了(完治または症状固定と診断)後、保険会社と示談交渉をする
- 4. 損害賠償として保険金が支払われる
知っておくべき保険会社の対応
ーー 交通事故後は保険会社とのやり取りが続くのですね。保険会社は寄り添った対応をしてくれるのでしょうか?
もちろん被害者の方に寄り添った対応をしてくれる保険会社もありますが、実はトラブルが発生することも多いです。
保険会社もなるべく支払額をおさえたいため、たとえば次のような手段をとることもあります。
- ・治療の打ち切りを提案される
- ・任意保険会社基準で算出される
- ・不利な過失割合にされる
それぞれ解説します。
治療の打ち切りを提案される
上述したように、保険会社も支払額をおさえたいため、突然治療費の打ち切りを打診されることがあります。
治療を開始して一定期間がたつと「事故の状況から判断して、そろそろ治療が終わる頃なので治療費の支払いは打ち切ります」などの連絡が入ります。
保険会社はあらかじめ、主治医に治療の終了時期について医療照会の回答を得ていることもありますが、時には被害者の方の治療状況や現在の症状を踏まえていないこともあるので、対応には注意が必要です。
治療をしている被害者としては、突然治療費の打ち切りを言われ、非常に困惑し、対応に苦慮することになります。
保険会社の担当者は、被害者の話を聞いて治療費の打ち切りを先に延ばしてくれることもありますが、多くは保険会社の意向で打ち切り時期が決められてしまいます。
任意保険会社基準で算出される
任意保険会社が算出する損害賠償は、自社の基準で算出するため、適正額よりも低くなるのが一般的です。
賠償金の算出基準は、①自賠責基準、②任意保険会社基準、③裁判(弁護士)基準の3つがあります。
任意保険会社基準は自賠責基準と同等か、少し高い程度です。
適正額の金額を受け取るためには、裁判所が使用する裁判(弁護士)基準(最も高額な基準)で算出してもらうことが大切です。
しかし、被害者本人が対応する場合、保険会社はかなり低い金額の賠償額の提示しか行わないことが通常です。
不利な過失割合にされる
賠償額に大きな影響を与える過失割合ですが、保険会社から不利な割合を主張されることがあります。
過失割合は判例タイムスの過失割合の考え方をもとに決められますが、保険会社はそれよりも加害者に有利な過失割合を主張してくることもあります。
また、過失割合は基本的に過去の判例を参考に決定しますが、保険会社が参考にした判例よりも、該当事故の状況に似た判例は他にもある可能性があります。
保険会社との交渉で大切なこと
ーー 上記のような場合、保険会社にはどのように交渉していけばよいのでしょうか?
治療の打ち切りについては安易に同意しないようにしましょう。
治療終了のタイミングを判断するのは医師です。
いつまで治療を行うべきかは、医師と相談して決定し、保険会社に治療期間を伝えて交渉をしましょう。
また裁判(弁護士)基準で賠償額を算出してもらうためには、弁護士に相談し、弁護士に交渉してもらうのが一番早道です。
過失割合についても、弁護士であれば、妥当な過失割合を相談でき、適切な割合になるように交渉してもらえます。
保険会社での対応について適切な支援を受けるには
ーーケガで心身が傷ついているのに、保険会社へポイントをおさえた対応が求められるのは大変ですよね。考えられる支援はありますか?
交通事故でつらい思いをしたのに保険会社からの提案に安易に応じてしまうと、経済的にもさらにつらい思いをしてしまいます。
そうならないために、支援を受ける手段として次の2つがあります。
- ・示談代行サービスを利用する
- ・弁護士に依頼する
それぞれ解説しますね。
示談代行サービスを利用する
示談代行サービスとは、自身に一定の過失割合が発生する物損について、自分の任意保険会社に依頼して代わりに示談交渉を行ってもらえるサービスです。
示談代行サービスが使えるかどうかは、自分が加入している保険会社へ確認をする必要があります。
物損の交渉の中で、過失割合については、自分の任意保険会社から加害者の任意保険会社に交渉してもらうことができます。
ただし、示談代行サービスは自身の保険を使う場面に適用されるので、人損部分には対応してもらえないほか、追突事故など、被害者に過失がまったくない状態では利用できません。
弁護士に依頼する
弁護士特約に加入しているのであれば、弁護士に示談交渉を依頼するのも有効な手段です。
弁護士であれば、賠償額が最も高額になる裁判(弁護士)基準で算出するため、適正額を受け取れる可能性が高いです。
また追突事故など被害者に過失のない事故にも対応してくれます。
弁護士特約は利用したとしても保険金が上がることはありませんので、安心して利用できますよ。