コラム
弁護士特約を使うと等級は下がる?保険への影響を現役弁護士が解説!
2024.08.05 保険弁護士特約は自動車保険などのオプションで、もし何か弁護士に依頼することになった際、弁護士費用などを補償してくれる特約です。
しかし弁護士特約を使うと、保険の等級が下がってしまい、今後月々の保険料が上がってしまうのではないかと心配する人もいるようです。
そこで今回は、高の原法律事務所の坪田弁護士に、弁護士特約を活用した際に保険の等級が下がるのかなどについて解説してもらいました。
弁護士特約とは?
ーー まずは弁護士特約の概要についておさらいさせてください。
わかりました。
弁護士特約は相手に損害賠償を請求する際、弁護士へ依頼をする弁護士費用や、法律相談費用などの補償を受けられる特約です。
弁護士に支払うだけでなく、次のような費用も補償されることがあります。
- ・訴訟費用
- ・仲裁費用
- ・和解費用
- ・調停費用
また多くの保険会社では次の2種類の補償タイプがあります。
- ・自動車事故のみを対象
- ・自動車事故+日常生活での事故を対象
日常生活まで補償範囲に入れると保険料は上がるのが一般的です。
しかし歩行中に自転車にはねられたり、犬に噛まれたりしたケースも補償範囲に入ります。
特約で支払われる保険額の限度額は決まっていることが多く、たとえば1回の事故に関しては弁護士費用トータル300万円、相談料は10万円までなどに設定している保険会社が多いです。
弁護士特約は使っても等級は下がらない
ーー 弁護士特約を使うと等級は下がりますか?
結論からお伝えすると、弁護士特約を利用しても保険の等級が下がることはありません。
そのため月々の保険料負担も増えることはないです。
翌年には1等級上がり、「ノーカウント事故」とも呼ばれています。
ーー 弁護士特約を使っても等級は下がらないのですね。では、なぜ多くの人が心配しているのでしょうか?
弁護士特約と同時に車両保険など、別のサービスも同時に利用すると、それによって等級が下がります。
たとえば自損事故を起こしてしまい、車両保険を修理費に当ててしまうと3等級下がります。
他にも、人身事故や物損事故を起こして、対人賠償保険や対物賠償保険を使った場合も同じです。
また事例としてはあまり多くないですが、タクシー会社など会社所有の車両に付いている弁護士特約については、利用すると保険料が上がることもあります。
個人で所有している車両については該当しません。
弁護士特約は利用できないこともある
ーー 弁護士特約は等級が下がらないなら使うべきですよね?
そうですね。
弁護士特約を使うと、損害賠償請求を適正額で行えるメリットがあります。
ただし弁護士特約はどのような場合でも使えるわけではありません。
たとえば次のようなケースでは利用できません。
- ・故意や自分の過失が大きい事故
- ・保険の適用範囲外の事故
- ・自然災害による事故
利用できないケースは保険会社によっても異なるので、具体的には特約を確認しておきましょう。
ではそれぞれ紹介します。
故意や自分の過失が大きい事故
弁護士特約の原則は適正額の損害賠償を請求するための特約です。
そのため自分が損害賠償を請求できる側でなければいけません。
故意に事故を起こした場合や、自分の過失割合が大きい場合は、相手から損害賠償請求される側になるので、特約が使えない可能性は高いです。
具体的には過失が60%〜70%以上になると使えない可能性があります。
酒気帯び運転や著しい速度超過など、悪質な運転をしていた場合は利用できないと考えておくべきでしょう。
保険の適用範囲外の事故
弁護士特約が適用される事故の範囲は保険会社によって異なります。
たとえば自動車事故のみを対象とした特約では、自転車事故や歩行中の事故などは対象外です。
また業務用自動車の場合は労災保険での対応になるため、弁護士特約は適応できないことがあります。
自然災害による事故
大雨や台風など自然災害の影響によって起こった事故については、弁護士特約の対象外になることがあります。
弁護士特約をうまく活用するためには
ーー交通事故では具体的にどういった場合に弁護士特約が活用されますか?具体的に効果的なケースを教えてください。
わかりました。
弁護士特約をうまく活用している代表例を5つ紹介します。
- ・相手が任意保険に加入していないため、当人同士で直接交渉しなければならない場合
- ・示談がうまくいかず裁判まで発展してしまいそうな場合
- ・相手に100%過失がある場合(保険会社が示談交渉できないため)
- ・相手に弁護士が付いている場合
- ・裁判(弁護士)基準で損害賠償請求をしたい場合
上記のようなケースは、弁護士に交渉を任せるほうが無難でしょう。
とくに入通院慰謝料や休業損害が発生するようなケースでは、損害賠償を裁判(弁護士)基準で請求できるかどうかで賠償額が大きく異なります。
しっかりと適正額を受け取るためには、弁護士に依頼をして裁判(弁護士)基準で請求することが大切といえます。