コラム
交通事故の過失割合とは?決め方と対処法、事故パターン別の基本過失割合を解説
2025.01.06 過失割合交通事故では、追突以外のケースでは、加害者に全面的に過失があるケースは少なく、被害者にも過失があることが多いです。過失割合は任意保険会社から示されることが多いですが最終的に決めるのは当事者です。過失割合の決め方や納得できない場合の対処法、事故パターン別の基本過失割合を解説します。
交通事故の過失割合とは?決め方と納得いかないときの対処方法について解説
交通事故に遭遇した場合、被害者は被った損害について、加害者から100%補償を受けられるとは限りません。被害者側の任意保険会社が、「今回の交通事故の過失割合は、加害者:被害者=30:70なので、補償額はこれだけになります」という感じで、損害賠償額を減額することもあります。
では、過失割合とは何でしょうか? また、過失割合はどのようにして決めるのか? 過失割合に不満がある場合はどう対処したらよいのかについて解説します。
交通事故の過失割合とは
交通事故の過失割合とは交通事故の加害者と被害者のどちらに落ち度があったかを数字で示すものです。
例えば、自動車が歩道に突っ込んで歩行者を怪我させたようなケースでは、自動車の運転手に100%の落ち度があるのが一般的です。
一方、歩行者が赤信号を無視して横断歩道を渡っていたところに青信号で走っている自動車と接触した場合は、歩行者にも落ち度があるため、一般的な過失割合は、自動車:歩行者=30:70となります。
交通事故の過失割合により損害賠償額が増減する
交通事故の過失割合により、被害者が加害者に対して請求できる損害賠償の金額が増減します。
加害者に100%の落ち度があれば、被害者が被った損害の全額を請求できることになります。
一方、被害者側に7割の過失があるケースでは、被害者が請求できる損害賠償額は3割に限定されてしまいます。
例えば、被害者の全損害が1000万円だったとしても請求できる金額は、300万円にとどまるということです。
交通事故の過失割合は誰が決めるのか?
交通事故の過失割合はどのようにして決まるのでしょうか?
警察や保険会社が決めると思われがちですが、あくまでも当事者の話し合いで決めるものであることを確認しておきましょう。
交通事故の過失割合は当事者が決める
交通事故の過失割合は、当事者が決めます。
つまり、加害者と被害者が話し合いを行ったうえで、決定します。
一般的には、示談交渉の中で過失割合を決めますが、示談がまとまらない場合は、訴訟を提起し、裁判所に過失割合を決めてもらうこともあります。
交通事故の過失割合の決定に警察は関与するのか?
交通事故の過失割合は、当事者が話し合って決めるものです。この話し合いは民事事件に当たるため、警察が決めたり、交渉に干渉することはできません。
ただ、交通事故が発生したときは、警察官が現場に駆けつけて、実況見分を行います。
そのうえで、警察が報告書を作成していますが、この報告書は、交通事故の状況を客観的に示す証拠になります。
保険会社や相手方との過失割合を巡る交渉は、この報告書を基に行うため、その意味で警察が作成する報告書が根拠となって、過失割合が決まると言うことはできます。
交通事故の過失割合は保険会社が決めるわけではない
交通事故の過失割合は、加害者側の保険会社が勝手に決めるものではありません。
加害者側の保険会社が被害者本人と話し合いをするケースでは、保険会社の担当者が資料を基にして、「今回の交通事故の過失割合は、〇:〇なので……」と、決定事項であるかのように話すことがあります。
しかし、これは、加害者側の保険会社の主張であって、被害者がその割合を飲まなければならないという意味ではないので注意しましょう。
交通事故の過失割合に納得できない場合は弁護士に交渉してもらう
加害者側の保険会社が、被害者本人に直接示談交渉を持ちかけてきた場合は、上記のように、交通事故の過失割合が決定事項であるかのように話を進めようとすることがあります。
交通事故の過失割合に納得できない場合、被害者は過失割合を変えるように交渉する事ができます。
しかし、そのためには様々な証拠や判例などを基に、加害者側を納得させなければなりません。
交通事故の示談のプロである保険会社の担当者を相手にこうした交渉を一般の方が行うことは至難の業です。
このような場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談、依頼すべきです。
過失割合によって、損害賠償請求できる額が大きく変わるため、納得できない場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
交通事故の過失割合の決め方
交通事故の過失割合は次の流れで決定します。
- ・交通事故の態様を確定する
- ・交通事故のパターンから基本過失割合を決める
- ・基本過失割合の修正要素を確認する
- ・交通事故の過失割合を決定する
交通事故の態様を確定する
一般的には、事故当事者の説明や、警察が実況見分を行って作成した報告書を基に事故状況を確定します。ドライブレコーダーがある場合は、その映像で事故状況が明確になります。
交通事故のパターンから基本過失割合を決める
交通事故のパターンはある程度画一化されていることから、交通事故の専門書では、事故のパターンと基本過失割合を示しています。具体的には、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」により、事故の態様に最も近いパターンを選んで基本過失割合を決めます。
基本過失割合の修正要素を確認する
「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」で示された交通事故のパターン別の過失割合では、被害者の年齢等は考慮していません。
例えば、被害者が小さな子供であれば、信号無視して飛び出しても過失の度合いは小さくならざるを得ません。
こうした点を考慮しながら、基本過失割合を修正します。
交通事故の過失割合を決定する
事故状況を踏まえて具体的な過失割合を協議し、加害者と被害者の双方が納得したら、交通事故の過失割合を決定します。
一般的には、加害者側の保険会社が過失割合を提示しますが、被害者がそれを受け入れなければならないということではありません。
交通事故のパターン別過失割合
代表的な交通事故のパターン別に基本過失割合を確認していきましょう。
横断歩道での交通事故の場合(四輪車と歩行者)
青信号で歩行者が横断歩道を渡っているときに、赤信号にも関わらず四輪車が進入した結果、四輪車と歩行者が衝突したとします。
この場合、赤信号にも関わらず進入した四輪車に100%過失があることになります。
逆に赤信号にも関わらず歩行者が横断して、青信号で四輪車が進入し、衝突した場合はどうでしょう?
この場合の一般的な過失割合は、「四輪車:歩行者=30:70」とされています。
全面的に歩行者に過失がある場合でも、四輪車の過失が0にならない点に注意しましょう。
また、歩行者が健康な大人ではない場合は、過失割合が修正されます。
例えば、
- ・歩行者が幼児や身体障がい者の場合は、「四輪車:歩行者=50:50」
- ・歩行者が小学校2~3年生の児童の場合は、「四輪車:歩行者=40:60」
このように、四輪車側の過失が大きくなってしまいます。
横断歩道のない道での交通事故の場合(四輪車と歩行者)
片側一車線で近くに横断歩道がない道路を四輪車が直進していたところ、突然、歩行者が車道を横断しようとして衝突した場合はどうでしょう?
この場合、一般的な過失割合は「四輪車:歩行者=80:20」とされています。
四輪車側は、車道でも歩行者が飛び出してくる可能性があることを意識しながら運転する注意義務があるところ、これを怠った結果、交通事故が発生してしまったと考えるわけです。
交差点での直進車同士の事故(信号機がある場合)
交差点では直進車同士が交通事故を起こすことがよくあります。
信号機がある場合は、赤信号なら止まり、青信号で直進するのが基本です。
青信号で進入した車と赤信号で進入した車が衝突した場合は、赤信号で進入した車に100%の過失があることになります。
交差点での直進車同士の事故(信号機がない場合)
交通量が少ない交差点では信号機が設置されていないこともあります。こうした場所では、自動車同士の出合い頭の事故が発生しやすくなります。
この場合は、一時停止標識がある側が一旦止まって左右を確認してから進入しなければなりません。
ただ、一時停止標識がなければ交差点でも、止まらなくていいわけではありません。
やはり、安全確認を怠るべきではないことから、一時停止標識がない側にも一定の過失が認められます。
そのため、一般的な過失割合は「一時停止標識がある側:ない側=80:20」とされています。
もっとも、一時停止標識がない側に前方不注視等の著しい過失があったと認められるときは、「一時停止標識がある側:ない側=70:30」となりますし、酒酔い運転等の重過失がある場合は、「一時停止標識がある側:ない側=60:40」となります。
交差点での直進車と右折車同士の事故(信号機がある場合)
信号機のある交差点で、青信号で直進した車と右折しようとした対向車が衝突してしまう事故もあります(右直事故)。
交差点では、直進車と右折車のどちらも、お互いの進路を予測して安全運転しなければなりませんが、過失割合は優先度により異なります。
道路交通法では、交差点で右折しようとする車両等は、直進や左折をしようとする車両の進行を妨害してはならないことになっています(道路交通法37条)。
つまり、直進車の方が過失割合が低くなるということです。
そのため、一般的な過失割合は「直進車:右折車=20:80」とされています。
信号機のない交差点でも同様になります。
交差点で直進車どうしが出会い頭に衝突した事故
交差点で、直進車どうしが出会い頭に衝突する事故はよく起こります。
この場合、交差点での「左方優先の原則」から、一般的な過失割合は「左方車:右方車=40:60」とされています。
しかし、一方に一時停止規制があり、これに違反して交差点に進入した場合は、進入車に一時停止義務違反があることから、「直進車:一時停止違反車=20:80」となります。
また、信号機のない交差点で、一方が優先道路の場合は、優先道路を直進する車が優先されます。
そのため、事故が優先道路上で発生した場合は、交差点で優先道路に進入しようとする車はより慎重に運転することが求められます。その結果、直進車の方が過失割合が低くなるため、直進車と衝突した場合の一般的な過失割合は、「優先道路直進車:進入車=10:90」とされています。
直線道路での自動車同士の事故(道路外からの左折)
直線道路でも自動車同士の事故が発生します。
例えば、道路に直進車がいるところに、駐車場などから他の車が、左折しようとして衝突したとします。
この場合の過失割合は、どちらが優先するのかにより異なります。
道路交通法では、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折等をしてはならないとされています(道路交通法25条の2)。
つまり、直進車の方を優先するということです。
よって、一般的な過失割合は「直進車:左折車=20:80」となります。
直線道路での自動車同士の事故(センターオーバー)
直線道路で、直進車同士が走行中に、一方がセンターラインなど道路の真ん中を超えて対向車に衝突した場合は、大変な事故になってしまいます。
車両は道路の中央(またはセンターライン)から左側部分を、左寄りで通行するのが原則となっていますから、過失はセンターラインを超えた側にあることになります。
よって、このような正面衝突事故では、センターラインを超えた側に100%の過失があることになります。
直線道路での自動車同士の事故(駐停車車両への追突)
直線道路に停車している車両に直進車が追突した場合です。
この場合は追突した直進車に100%の過失があることになります。
ただ、駐停車車両が、駐停車の場所や方法のルールを守っていない場合は、駐停車車両側にも過失があると判断されて、過失割合が変わる可能性もあります。
まとめ
交通事故の過失割合は、被害者にも落ち度や過失がある場合に問題となり、加害者側の任意保険会社からは、損害賠償額を減額するための口実として利用されがちです。
交通事故のパターン別に基本過失割合は決まっていますが、交通事故の態様により、過失割合は変化します。
また、過失割合は加害者側の任意保険会社が勝手に決めるものではないですし、被害者に過失があってもそれを受け入れなければならないわけではありません。
任意保険会社から示された過失割合に納得できない場合は、弁護士に相談してください。
弁護士なら、適切な過失割合を設定したうえで、任意保険会社との交渉を行うことが可能です。