コラム
自転車の交通事故の過失割合の決め方とは? 車の事故との違いも解説
2025.02.15 過失割合自転車の事故における過失割合について、交通事故のケース別に徹底解説しています。過失の割合が修正される要素についても紹介します。
自転車事故における過失割合とは? 他の交通事故との違いも解説
自転車が絡む交通事故では、過失割合がどのように決まるのか分かりにくい面があります。
自動車との事故では、自転車は弱者として過失がやや軽くなりますが、歩行者との事故では自転車が強者になるため、過失が重くなります。
この記事では、自転車事故における過失割合について、ケース別に解説します。
自転車の道路交通法における位置づけ
自転車は、道路交通法では、軽車両に位置づけられています。
自転車に乗るのに、運転免許は必要ありませんが、一定の交通ルールは守って走行しなければなりませんし、交通違反があれば取締の対象となります。
2024年5月には、自転車の交通ルールや規制を守らなかった場合に、青切符による取り締まりが行われるよう道路交通法の改正が行われました。
例えば、信号無視、一時不停止、スマホ運転、右側通行などがあれば、青切符が切られますし、特に危険な運転の場合は赤切符の対象になります。
自転車事故の過失割合とは
自転車は軽車両と位置づけられているため、自転車が絡む交通事故では、自転車側にも過失があると認定されることが多いです。
自転車側の過失がある場合は被害者の立場でも、損害賠償額が一定割合減額されてしまいます。
自転車事故における過失割合の決め方
自転車事故における過失割合は、典型的な事故類型ごとに目安が決められています。
(財)日弁連交通事故相談センターが発行している「交通事故損害額算定基準」に事例ごとの基本過失割合がまとめられているので参考にするとよいでしょう。
ただ、ここに記載されている交通事故の過失割合は目安であり、どの事故にもそのまま当てはめられるわけではありません。
交通事故の当事者の年齢や状況等の修正要素によって、実際の過失割合は、「+ 5%〜10%」「-5%〜10%」といった具合に増減します。
以下、自転車事故における過失割合の目安を紹介します。
交差点での自転車事故の過失割合
交差点は自転車事故が発生しやすいポイントです。自転車と自動車(またはバイク)が衝突した事案を想定して、過失割合の目安を確認していきましょう。
自転車と自動車が直進の場合
自転車と自動車が交差点で衝突した場合は、次のような過失割合になります。
交差点では自転車と自動車のどちらも一時停止すべきですが、自動車の方がより危険な乗り物を運転しているため、過失の割合が高くなります。
もっとも、自転車が右側通行をしていて、車から見えにくい位置にいたといった事情がある場合は、自転車の過失がやや重くなるので、自転車側の割合が高くなることもあります。
直進自転車と右折自動車の場合
直進する自転車と右折自動車とでは、直進する自転車が優先されます。
そのため、右折自動車の方が過失が重くなり、次のようになります。
交差点に信号があり、どちらも青信号だった場合はもちろんですが、信号がない場合も同様に考えます。
信号が黄色信号の場合は、どちらも進入すべきではありません。
それにもかかわらず、直進する自転車と右折自動車が進入して衝突した場合の過失割合は次のとおりです。
自転車も信号を守らず直進している点が考慮されるため、自転車の過失がやや上がっています。
では、右折自動車が青信号で進入し、黄色信号で右折しようとしたところで、直進自転車が黄色信号で進入したらどうでしょうか?
繰り返しになりますが黄色信号は原則として停止すべきで、安全に止まれない場合は進入してよいというものです。
そのため、黄色信号で進入した直進自転車の過失が重くなるので、過失割合は次のようになります。
自転車の方が非があると言えるわけですが、それでも、自動車の方が強者であることから、右折時も自転車に注意すべきであることから、このような過失割合になります。
直進自転車と右折自動車が同方向の場合
自動車は左側通行が原則です。そのため、直進自転車と右折自動車が衝突することはないはずですが、やはり、衝突事故が起きることがあります。
自転車が右側通行をしている場合、直進自転車と右折自動車が同方向で衝突する恐れがあります。
自転車にも一定の過失があるということができるため、自転車の過失が加味され、次の割合になります。
交差点で青信号の場合はもちろんですが、信号がない場合も同様です。
では、交差点に信号があり、右側通行の直進自転車と右折自動車が黄色信号で進入した場合はどうでしょうか。
黄色信号はどちらも停車すべきですから、自転車の過失も高くなります。
そのため、次の割合になります。
右折自動車が青信号で進入した後に黄色信号になり、右側通行の直進自転車が進入して衝突した場合はどうでしょうか。
この場合は、黄色信号で進入した直進自転車の過失が大きくなるため、次の割合になります。
やはり、自転車も軽車両ですから、交通ルールを守っていないと過失が重くなることが分かります。
直進自転車と左折自動車が同方向の場合
左側通行の自転車と左折自動車が衝突するケースです。
自転車は左側通行が基本ですから、交通ルールを守っていると言えますが、自転車も自動車が左折する可能性を考慮しながら運転すべきです。
そのため、自転車にも一定の過失が認められるのが一般的なので、次のような割合になります。
直進自転車と左折自動車が正面衝突する場合
右側通行の自転車と左折自動車が正面衝突するケースです。
右側通行の自転車は交通ルールを守っていないことになるため、一定の過失があります。
そのため、次のような過失割合になります。
交差点を横断する歩行者と自転車の事故の場合
信号機のない交差点を歩行者が横断しているときに直進する自転車と衝突した場合です。
歩行者と自転車の場合は、自転車の方が強者になりますから過失割合が大きくなります。
そのため基本的な過失割合は次のようになります。
横断歩道での自転車事故の過失割合
自転車は歩行者横断歩道を通ることもできます。
横断歩道が青信号のときに渡れば過失はありませんが、一方で右折や左折してくる自動車にも注意しなければなりません。
自転車が青信号で右折や左折の自動車が青信号の場合
自転車が青信号で横断歩道をわたっているのに、右折や左折の自動車と衝突した場合です。
自転車には大きな過失はありませんが、右折や左折の自動車に注意しながらわたる義務があると考えられます。
そのため、自転車にもわずかながら過失が認められ、次のような割合になります。
自転車が赤信号で自動車が黄色信号の場合
横断歩道が赤信号になったらわたってはいけないのが原則です。
それにもかかわらず、自転車が赤信号でわたっている場合は大きな過失があります。
自動車も黄色信号で侵入することは過失ありと言えますが、それでも自転車の過失のほうが大きくなります。
そのため次のような過失割合になります。
横断歩道を渡る歩行者と車道を走る自転車の事故
歩行者が横断歩道を渡っている間に車道を走る自転車が突っ込んで衝突した場合です。
この場合は、自転車が強者になるため、全面的に自転車に過失があることになります。
そのため次のような過失割合になります。
横断歩道で歩行者と自転車が衝突する事故
歩行者と自転車の双方が横断歩道を渡っていて、衝突した場合です。やはり、全面的に自転車に過失があることになります。
ただ、自転車が自転車横断帯内を走っていたのに、歩行者がそっちに飛び出した場合などは、歩行者にも過失があるため、次のような過失割合に修正されます。
車道を走る自転車と自動車が衝突する事故
自転車は車道の左側を走るのが原則です。一方で、自動車の通行にも気をつけなければなりません。
駐車場を出入りする自動車と自転車の衝突事故
自動車が道路から駐車場に入ったり、駐車場から道路に出るタイミングで車道を走る自転車と衝突した場合です。
自転車は交通ルールを守って走っていれば、過失がないとも言えますが、やはり、車道を走る以上周辺の自動車には気を配る必要があります。
そのため、過失割合は次のようになります。
進路変更する自転車と自動車の衝突事故
車道を走る自転車が前方に停車している車を避けるために中央寄りに進路変更し、そこに後方を走る自動車が直進して衝突した場合です。
この場合は、自動車は前方の自転車が進路変更することを予想するべきなので、自動車の過失割合が高くなります。次のとおりです。
それに対して、車道を走る自転車が前触れなく、中央寄りに進路変更した場合は、自動車は前方の自転車の進路変更を予想できないため、自動車の過失割合がやや下がります。次のとおりです。
車道を横断する自転車との事故
自転車が歩行者同様に車道を横断する場合です。
車道の横断は、本来、横断歩道のある場所で行うべきなので、自転車にも一定の過失があります。
そのため、次のような過失割合になります。
車道を横断する歩行者と自転車の事故
歩行者が車道を横断しているときに、車道を走る自転車と衝突するケースです。
この場合は、歩行者にも一定の過失がありますが、やはり、自転車の方が強者なので次のような過失割合になります。
自転車事故における過失割合は誰が決めるのか?
自転車事故における過失割合は、交通事故の当事者が話し合って決めるのが原則です。
ただ、当事者同士の話し合いだけでは、感情的なすれ違いなどもあり、うまく話がまとまらないこともあります。
警察の言う過失割合
交通事故の現場で取調べや事情聴取、実況見分を行った警察官が過失割合について、意見を言うことがあります。
例えば、被害者に対して、「過失割合は五分五分だ」「あなたにも過失がある」といったような話をすることがあるかもしれません。
加害者側としては、警察官が被害者にも落ち度があると発言してくれれば、過失割合で考慮されると思うかもしれません。
しかし、警察官の発言はあくまでも、警察官個人の感想であって、責任をもってそのように認定しているわけではありません。
ただ、警察が作成する交通事故証明書は、その後、過失割合を決める際に重要な証拠になりますから、自分の主張はしっかりと述べることが大切です。
保険会社の主張する過失割合
加害者側の任意保険会社は、被害者に対して、治療費や慰謝料などを計算して、いくらになるか提示する立場です。
損害賠償額の合計額を示す際に、判例などの根拠と一緒に、「今回の事故の過失割合はこちらになります」という形で提示してくることがあります。
しかし、過失割合は加害者側の保険会社が決めるものではありません。
保険会社としては「過失割合はこうなると思います」という意見を述べているだけです。
そのため、被害者がその過失割合に納得できない場合は、自分の意見を主張する形で交渉することも可能です。
もっとも、保険会社は交通事故問題のプロですから、根拠なしに適当なことを言っているわけではありません。判例や交通事故の事例などを基に、明確な理由を示すのが一般的です。
保険会社が主張する過失割合が妥当なケースが多いので、これに対して異議を唱えるには、相当の専門知識と保険会社が把握していない交通事故現場の状況も踏まえる必要があります。
一般の方にとっては、交通事故後の治療を続けながら、ご自身で資料などを調べることは難しいと思います。
このような場合は、交通事故に強い弁護士にご相談いただくのが最善です。
弁護士が対応すれば保険会社の主張する過失割合が妥当か判断し、不当な場合は、適切な過失割合を主張することができます。
示談交渉で決められた過失割合
過失割合は、加害者側の任意保険会社が案を示し、被害者側も意見を出して、双方の話し合いを経て決めるものです。
保険会社の案で、そのまま決まることもありますし、修正されることもあるでしょう。
いずれにしても、示談交渉を経て最終的な過失割合が決まります。
示談交渉が決裂した場合は、裁判を提起することになります。
交通事故の過失割合を巡って、示談交渉が長引いたり裁判に発展する場合は、早い段階で弁護士が対応した方が解決が早まります。
裁判における過失割合
裁判では、加害者側と被害者側の双方が、それぞれ妥当だと思う過失割合を主張する形になります。
裁判官は双方の意見を聴き、証拠を吟味したうえで、和解案を示すこともあります。
双方が和解案に納得すれば、和解成立となり、そこで示された過失割合で決まります。
和解が成立しない場合は、判決を下す形になり、判決書の中で過失割合が決められます。
第一審の判決に納得できない場合は、控訴する形になりますが、いずれにしても、最終的には裁判所が過失割合を決定します。
交通事故の態様が特殊な場合は、裁判で争うことで過失割合を大幅に変えられることもありますが、典型的な事故の場合は、裁判で争っても過失割合が大きく変わることはないのが一般的です。
まとめ
自転車が絡む交通事故についてケース別に解説しました。
この記事で紹介した過失割合は、基本的な過失割合で、実際の割合は、交通事故の状況や当事者の年齢などにより、修正されます。
自転車側の過失割合が高くなると、相手側から支払われる示談金が減るので、入院費用、治療費などの様々な費用について十分な補償が受けられない恐れがありますし、慰謝料も減額されてしまいます。
相手方から示された過失割合に納得できない場合は、納得できる説明をしてもらうべきですし、話し合いがまとまらない場合は、弁護士に相談することも検討してください。