コラム
バイク事故の慰謝料はいくら?相場額や請求のポイントを弁護士が解説!
2025.04.08 慰謝料バイク事故も車の事故同様に慰謝料を請求できます。本記事では、それぞれの慰謝料の相場や計算方法、請求時の重要ポイントについて解説します。事故の状況によっては過失割合の見直しや後遺障害等級の適正な認定も必要になるため、弁護士に相談するのが重要です。
バイク事故も精神的苦痛に慰謝料が支払われると聞いたものの、具体的な金額や賠償金の請求方法が分からず不安を感じる方も多いです。
このケースの慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料と3種類ありますが、算出基準によって支給額が大きく変わります。
本記事では、それぞれの慰謝料の相場や計算方法、請求時の重要ポイントについて解説します。
バイク事故被害者の慰謝料
バイク事故であっても請求できる慰謝料については、自動車の事故と同様に考えます。
そのため、車と同じように状況に応じて下記の慰謝料請求が可能です。具体的には以下の慰謝料です。
- ・入通院慰謝料
- ・後遺障害慰謝料
- ・死亡慰謝料
それぞれについて解説していきます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、バイク事故による怪我の治療のために入院や通院をした際に請求できる慰謝料です。
慰謝料の金額は、入院や通院の期間、怪我の程度、治療の必要性などを考慮して決まります。
入院期間が長いほど、また通院の頻度が高いほど、慰謝料の金額は増える傾向です。
とくに、治療のために仕事を休まなければならなかった場合や、日常生活に支障をきたした場合には、精神的苦痛の大きさが考慮されやすいです。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、バイク事故による怪我が治療を終えても完全には回復せず、後遺症が残った場合に請求できる慰謝料です。
事故によって身体に障害が残ると、日常生活や仕事に影響を及ぼし、精神的な苦痛も大きくなります。
慰謝料の金額は後遺障害の等級によって変わり、等級が高いほど増額されます。
等級は医師の診断書や検査結果をもとに判断され、申請の際には適切な書類をそろえなければなりません。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、バイク事故によって被害者が亡くなった死亡事故で請求できる慰謝料です。
被害者本人と遺族が受けた精神的苦痛に対する補償のため、「被害者本人に支払われる慰謝料」と「被害者遺族に支払われる慰謝料」の2種類があります。
ただし、すでに亡くなっている被害者分を受け取るのは、遺族の中から選ばれた相続人です。
慰謝料額は、被害者の立場や遺族の関係性によって異なり、請求できる範囲も法律によって定められています。
被害者が一家の支柱であった場合や、扶養家族が多い場合には、精神的苦痛だけでなく経済的負担も大きくなるため、慰謝料の金額が増額されます。
バイク事故の慰謝料の計算方法
上記で上げたような慰謝料を請求する際は、下記の3つの基準で額の算出がされます。
- ・自賠責基準
- ・任意保険会社基準
- ・弁護士基準
それぞれに基準によって、算出される額が大きく異なるため、慰謝料請求の際はしっかりと算出方法を把握しておくことが大切です。
それぞれの計算方法について解説していきます。
自賠責基準
自賠責基準は、被害者が最低限の補償を受けられるように設けられた基準です。
すべてのバイクに加入が義務付けられており、事故の際にはこの保険を利用して慰謝料を請求できます。
自賠責基準による慰謝料は被害者救済を目的としていますが、実際の損害をすべて補えるとは限りません。
入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料について自賠責基準の計算方法をそれぞれ解説します。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は一定の計算方法で算出されます。
慰謝料の対象となる日数は、
- 1. 治療期間全体の日数
- 2. 実際の通院日数を基準にした日数×2
のどちらか少ない方が適用されます。
1日あたりの支給額は4300円と定められており、それに対象日数を掛けた金額が慰謝料額です。
たとえば、治療期間が30日で入院が10日、通院が3日だった場合、
4300円 ×(10日 + 3日)× 2 = 111,800
を適用し、111,800円が支給されます。
ただし、支払いには120万円の上限が設定されており、他の損害と合わせて120万円を超えると超過分は補償の対象外です。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、等級に応じた固定額が定められています。
後遺障害は、1級から14級まで細かく分類され、等級が重いほど慰謝料の金額も高くなります。
最も重い1級では1650万円、14級では32万円と大きな差です。
等級ごとの具体的な金額は下記の表のとおりです。
等級 | 自賠責保険基準 |
---|---|
1級(介護あり) | 1650万円 |
1級 | 1150万円 |
2級(介護あり) | 1203万円 |
2級 | 998万円 |
3級 | 861万円 |
4級 | 737万円 |
5級 | 618万円 |
6級 | 512万円 |
7級 | 419万円 |
8級 | 331万円 |
9級 | 249万円 |
10級 | 190万円 |
11級 | 136万円 |
12級 | 94万円 |
13級 | 57万円 |
14級 | 32万円 |
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、被害者本人と遺族の立場に応じて定められています。
被害者本人の慰謝料は一律で400万円と決められており、遺族の慰謝料は請求する人数によって変動します。遺族が1人なら550万円、2人なら650万円、3人以上で最高750万円が支払われる仕組みです。
被害者に扶養されていた家族がいる場合には200万円が加算されます。
算出基準 | 被害者本人への慰謝料相場 | 遺族への慰謝料相場 | 備考 |
---|---|---|---|
自賠責基準 | 400万円 被害者に扶養家族がいる場合は200万円が加算される |
請求者数 1名:550万円 2名:650万円 3名:750万円 |
損害賠償の総額は3000万円が上限 |
任意保険基準
任意保険基準は、保険会社が独自に設定する基準です。
任意保険会社基準は、各保険会社が入通院慰謝料の算定基準を設けており、公開していません。
一般的に、自賠責基準よりも多少高額になることが多いものの、保険会社ごとに基準が異なるため、一律の計算方法は存在しません。
弁護士基準
弁護士基準は、過去の裁判の事例をもとに算出される慰謝料の基準であり、他の基準と比較すると高額になることが多いです。
弁護士基準は裁判所が認めた賠償額をもとにしているため、被害に対するより適正な金額といえるでしょう。
たとえば、入通院慰謝料では、自賠責基準の約2倍になることもあります。
入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料について弁護士基準の計算方法をそれぞれ解説します。
入通院慰謝料
算出方法には、日本弁護士連合会の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」に掲載されている算定表が用いられます。
この算定表には「軽傷用」と「重傷用」の2種類があり、入院・通院の期間に応じた金額が決められています。
たとえば、骨折で1か月の入院後、2か月間通院した場合、重傷用の基準が適用され98万円です。
通常は重傷用が基準になりますが、むちうちや打撲で画像検査に異常が見られない場合は軽傷用が適用されるケースもあります。
後遺障害慰謝料
弁護士基準による後遺障害慰謝料は、自賠責同様に等級に応じて請求金額が定められています。どの等級においても自賠責基準よりも請求できる金額は高いです。
等級 | 自賠責保険基準 |
---|---|
1級(介護あり) | 2800万円 |
1級 | |
2級(介護あり) | 2370万円 |
2級 | |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
死亡慰謝料
弁護士基準による死亡慰謝料の相場は、2000万円〜3100円程度です。
被害者が一家の支柱になっていたかどうかなどが金額に大きく影響します。裁判実務上は被害者本人とご遺族への慰謝料が合算されて支払われます。
バイク事故で慰謝料を請求するポイント
各基準によって、請求できる慰謝料額が異なることについて解説してきましたが、基準と同様に慰謝料請求にはいくつかポイントがあります。
請求のポイントをしっかりとおさえておくことで、適正額での請求が可能です。
紹介するポイントは下記の4点です。
- ・後遺障害認定等級
- ・適正な過失割合
- ・弁護士基準で算出する
- ・その他増額できる理由もある
それぞれ解説します。
後遺障害認定等級
適正な後遺障害等級が認定されれば、慰謝料や逸失利益の増額につながるため、損害賠償の金額が大きく変わります。
バイク事故の被害者が後遺障害の認定を受ける方法には、加害者側の任意保険会社が手続きを行う「事前認定」と、被害者自身が申請する「被害者請求」の二種類があります。
事前認定は手間がかからないものの、保険会社が主導するため、必要な資料が十分に提出されないケースも珍しくありません。
一方、被害者請求では自ら必要書類を準備できるため、より適正な認定を受けやすくなります。
ただし、医師の診断書や後遺障害診断書の内容が重要になり、弁護士など専門家の助言を受けながらすすめることが大切です。
適正な過失割合
過失割合は慰謝料の金額を決める重要な要素です。
被害者にも一定の過失があると判断されると、請求時に慰謝料が減額されます。
たとえば、交差点での事故では信号の状況や速度、優先道路の有無が影響します。
過失割合の判断は、過去の裁判例や保険会社の基準をもとに決定されますが、必ずしも適正とは限りません。
保険会社の提示する割合に納得できない場合は、弁護士に相談することで適正な割合を主張しやすくなります。
弁護士基準で算出する
適正額の慰謝料はやはり裁判所が用いる弁護士基準になるといえるでしょう。
保険会社はできるだけ支払額をおさえようとするため任意保険会社基準を採用します。
そのため、弁護士に依頼しない限り弁護士基準が適用されることはほとんどありません。
弁護士に依頼すれば、適正な慰謝料額を計算し、証拠をそろえた上で交渉が可能です。
示談交渉が不調に終わった場合でも、裁判を見据えた対応ができるため、より適正な慰謝料を受け取れる可能性が高まります。
その他増額できる理由もある
慰謝料は基準額だけで決まるわけではなく、個別の事情によって増額される可能性があります。
たとえば、加害者に重大な過失がある場合、通常の基準よりも高額な慰謝料が認められることもあります。
信号無視や飲酒運転、悪質な速度超過などが該当し、被害者の精神的な苦痛が大きいと判断されるケースです。
加害者の態度も影響し、事故後に誠意のない対応をとったり、過失を否認し続けたりした場合も、慰謝料増額が認められるかもしれません。
慰謝料以外の請求できる損害賠償
ここまでは慰謝料について詳しく見てきましたが、バイク事故では慰謝料以外にも下記のような名目で、損害の補償を受けられます。
- ・治療費
- ・通院交通費
- ・休業損害
- ・逸失利益
慰謝料だけではなく、請求できる損害に何があるのか、専門家からアドバイスを受けるなどして把握しておくことが大切です。
治療費
治療にかかった費用です。
病院での診察や手術、リハビリにかかる費用だけでなく、薬代や装具代なども含まれます。健康保険を使って治療を受けることも可能ですが、その場合でも実際に負担した費用をもとに請求が行われます。
通院交通費
通院にかかった交通費も損害賠償の対象です。
電車やバスを利用した場合の運賃、タクシーを使った費用、マイカー通院時のガソリン代や駐車料金などが含まれます。
請求を行う際は、交通費の領収書や通院記録を残しておくことが大切です。
休業損害
仕事を休まなければならなかった場合、休業による収入の減少を補償する請求が可能です。
給与所得者だけでなく、自営業者やアルバイトでも証明ができれば補償を受けられます。
請求には、勤務先から発行される休業証明書や給与明細、確定申告書などが必要です。
休業日数と日額をもとに算定され、職業や収入によって補償額は異なります。
逸失利益
事故の影響で将来的な収入が減少すると認められる場合、慰謝料とは別に逸失利益の請求が可能です。
後遺障害が残った場合や、事故が原因で仕事を続けられなくなった場合に補償の対象となります。計算には、事故前の収入、労働能力の低下率、就労可能年数などが考慮されます。
バイク事故は弁護士へ相談を!
本記事で解説してきたようにバイク事故で慰謝料を請求する際は、計算基準や交渉のポイントを理解していないと適正な金額を受け取れません。
保険会社が最初に提示する金額は弁護士基準より低いことが多く、交渉なしでは本来の補償を得られない可能性があります。
事故の状況によっては過失割合の見直しや後遺障害等級の適正な認定も必要になるため、専門知識が不可欠です。
弁護士に相談することで、証拠の整理や適正額の算出、交渉のサポートを受けられます。まずは弁護士に問い合わせ、状況を整理することが重要です。無料で相談できる法律事務所もあるので、お気軽にご相談することをおすすめします。