解決事例
バイクで交差点を走行中、前方不注意の対向車が右折して衝突し転倒・負傷、13級の後遺障害が認定された事例
1.事故状況
Aさんがバイクで交差点を走行していたところ、前方不注意の車が右折して衝突し、Aさんは転倒して身体を強打しました。
この事故で、Aさんは胸部打撲傷、左下肢打撲傷、左前腕挫創、下顎挫創、左第5指中節骨開放骨折、左小指伸筋腱断裂の傷害を負いました。
Aさんは病院へ救急搬送されて治療を受けました。左小指の骨折、腱断裂については後日手術を受け2カ月半の入院をした後、リハビリを続けました。
その後、骨癒合の経過観察をし、事故から2年後に症状固定となりました。
2.相談のきっかけ
症状固定後Aさんは加害者側保険会社と示談の交渉を行いましたが、話し合いが進まない状態になっていたところ、加害者側が代理人として弁護士をたて、損害賠償額確定の調停を申し立ててきました。
Aさんはどのように対処すればよいかを相談するためにインターネットで検索して、当事務所を訪問し弁護士と面談されました。
Aさんは、面談の後この交通事故の示談交渉を弁護士に委任されました。
3.弁護士の活動
加害者側代理人の申し立ては、Aさんに後遺障害がないという条件での損害賠償額の確定なので、弁護士は直ちにAさんの後遺障害の認定を受けるための活動を開始しました。弁護士は、Aさんの診療記録、検査画像や医師の診断書を入手し、自賠責調査事務所にAさんの後遺症認定を申し立てました。
Aさんには左手小指の機能障害が残り、痛み、しびれ、近く鈍麻が残っていることから、Aさんの後遺障害は「局部に頑固な神経症状を残すもの」及び「1手の小指の用を廃したもの」として12級相当と主張しました。
これに対し、自賠責調査事務所は「1手の小指の用を廃したもの」として13級と認定しました。
後遺障害の認定に伴い、加害者側代理人は調停を取り下げました。弁護士は加害者側代理人との示談交渉を開始しましたが、休業補償や逸失利益交渉で折り合いがつかず、弁護士はAさんと相談の上で訴訟を提起して損害賠償を求めることにしました。
裁判は長期に渡りましたが、訴訟提起から1年後に裁判所からの和解案を双方が受け入れて決着しました。この和解案では、弁護士が概ね認められていました。
4.弁護士関与の成果
主な争点と裁判所の結論
・過失割合:加害者側代理人の85:15との主張に対し、裁判官は加害者が衝突時まで被害者に気付いていないことを認めて95:15を認定しました。
・休業損害:加害者側代理人は、被害者が確定申告をしていないので収入が立証できないとして認められないと主張したが、裁判官は被害者が事故のために確定申告が出来なかったことを認めて、休業損害を認定しました。
・逸失利益:加害者側代理人は小指の後遺症は雑貨店の経営に支障を与えないとして逸失利益はないと主張したが、裁判官は被害者が自ら製作したものを販売することが出来なくなったとして、67歳までの逸失利益を認めました。
・入院中の個室料:加害者側代理人は、個室の利用は必要ないと費用を認めないと主張したが、裁判官は医師の判断を尊重して個室料を認めました。
加害者代理人提示額 | 和解額 | |
治療費、交通費等 | 135万円 | 191万円 |
通院慰謝料 | 108万円 | 199万円 |
休業損害 | 0万円 | 175万円 |
逸失利益(13%) | 0万円 | 579万円(31年) |
後遺障害慰謝料(13級) | 0万円 | 180万円 |
小計 | 243万円 | 1324万円 |
過失相殺 | -36万円(15%) | -66万円(5%) |
調整金(損害遅延金等) | 211万円 | |
207万円 | 1469万円 |
Aさんの治療費を除いた手取りの損害賠償金は、当初の提示案の72万円から1278万円に1206万円増額され、17.7倍になりました。
5.弁護士の所感
示談交渉において、被害者が加害者側保険会社の損害賠償金の提示案に納得できず交渉が長引いた場合、加害者側保険会社は示談交渉を弁護士に委任して、法廷での決着を図ることがあります。
被害者にとって、いきなり調停や裁判を申し立てられて、裁判所から呼出状が届いた場合には精神的な圧迫を感じるはずです。
交渉相手が弁護士になった場合、法律用語を駆使した加害者側代理人の書面を見ると、まるで自分が悪いことをしていると言われているように思えるかもしれません。
このような場合は、すぐに弁護士に相談してどのように対処したらよいかを相談されることをお勧めします。
弁護士は、多くの経験や知識から、加害者側代理人がどのような考え方でいるのかを推測し、適切な対応を助言できます。現実として、被害者が単独で裁判に臨むのは難しいので、面談して相談した上で信頼できると思える弁護士に委任されるのが良いでしょう。
この事例では、加害者側代理人はゼロ回答に近い内容で決着させることを意図していましたので、対応策として被害者が仕事に対して受けた被害を細かい部分まで立証し、被害者の損害額が大きいことを主張しました。
弁護士は、被害者の個々の状況に合わせて裁判の戦略を立て、被害者の利益が少しでも大きくなるように努めています。
高の原法律事務所
所長 坪田 園子
代表弁護士である坪田園子は、「顔の見える関係」を何より大切にしております。依頼者とは、必ず直接お会いして、お話をじっくりとお伺いしたうえで事件をお受けしております。奈良の高の原という奈良の郊外で、地域密着の依頼者対応をモットーとしております。最初は不安な顔で相談に来られた方も、無事に解決した後は、笑顔になって帰られます。一人でも多くの方の笑顔が見られるように精進致します。ぜひお気軽にご相談をくださいね。